夢
MIU404の撮影が終わってスタッフさん達が機材やらを片付けている間、出演俳優たちはなんとなく手持ち無沙汰な様子だった
主演2人は特に手伝えることもすべきこともなかったため外に出てぶらぶらしていた
夢の設定によると徳島で撮影があったらしく、私も脇役として出ていたっぽい(演技した記憶はない)
夢の中であろうと下心はしっかり残っていたので「これって…直接話せるチャンス今しかないのでは!!??」と片付けに追われるスタッフを横目に夢中で外へ飛び出した
勢いで飛び出したはいいもののもちろん面識も何もないのでどう話しかけて良いか分からず尻込みした
いざ本物の2人を目前にすると話しかける勇気が完全に消え失せてしまったので目線で話しかけたいオーラを出すことで気づいてもらう作戦へとシフトした
まずは星野源に狙いを定めた(?)
するとさすがに何度か目が合ったため(強制的に合わせた)、彼から「…(タバコ)吸う?」と話しかけてきてくれた
「…吸う?」
「あ…生憎今はタバコ切らしてて…電子タバコもどっかいっちゃったんですよね笑」
「俺のやるよ」(志摩スマイル)
とタバコを渡して火まで点けてくれたので嬉しさに高揚し、本当は吸い方がよく分かってないなんて絶対に言わないでおこうと心の中で強く誓った
星野源と一服しながら撮影中のエピソードについて聞かせてもらう時間は至福でしかなかった
綾野剛はそれを聞きながらどこか満足げな笑みを浮かべていた
薄らピンクがかった夕陽にその顔が照らされて、あまりの美しさにドラマのワンシーンかと錯覚しそうになった
タバコの火が吸い口に段々と近づくのが、この至福の時間の終わりを知らせてに来ているようで嫌でたまらなかった
さすがにもう吸えなくなったので口から離し、足で雑に火を消していると星野源の携帯がけたたましく鳴り出した
旧友からの電話らしかった なぜか彼はスピーカーにしたまま友人と楽しそうに話していた
私はそれを見て彼にも俳優や歌手でない一面があって、誰にも絶対に入り込めないプライベートがあるんだよなと漠然と考えていた
電話を終えると、徳島から東京へ帰るのには時間がかかるからそろそろ行かないといけないと告げられた
私「え!!じゃあ最後に一個!!これだけ聞かせて!!!」
聞きたいことはさっき全部聞けたし言いたいことも大体言えたのでもう何も残ってなかったが図々しい私はありもしない質問をでっち上げて彼を少しでもこの場に引き留めようとした
星野源「なに?」
急がなきゃいけないのに聞いてくれる優しさよ…いや感動している場合じゃない、何か聞かなくては…引かれないような無難な質問…!!
「も、もう一日徳島に泊まってどこか観光とかしないんですか!??」
彼がどんなリアクションをしたかは言わずもがなである 私も引き留めたのを後悔したがもうその状況で他になす術はなかった
無論撮影のスケジュールも詰まっているので泊まっていくはずなどない
「新幹線の予約ももう取ってあるからな…でも、また来るよ」(志摩スマイル)
夢とはいえこれを拝められた私は完全に優勝したと起きた今でも思ってます。
綾野剛はなぜかそのタイミングで軽トラを走り出させ、去り際に車のスピードを少し緩めて窓を開け、
「じゃぁーねっ。また会おうぜ〜ぃ👍🏻🌟」(伊吹スマイル)
と残して颯爽と消えて行った
昇天しかけたがなんとか正気を保ったまま星野源の方へ振り向き、見送る覚悟を決めて「お疲れ様でした」と一言だけ告げた
彼も「おう、お疲れさん」て感じでどっかへ去って行った
気づくとスタッフたちは皆片付けを終えて解散していた
1人取り残されたが撮影場所が家の近くだったため幸い歩いて帰れる距離ではある
なぜか路地裏のような狭くて暗くてじめっとした道を、塀を手繰るようにして帰っていた
すると何かにつまずき、長く使われていないであろう荒れ果てた畑のようなところに転げ落ちた
そこで蜘蛛の糸にひっかかり、手にチクッとした痛みを覚えた
蜘蛛の巣を目で辿っていくと、禍々しい色をした大きな蜘蛛が佇んでいた
蜘蛛は好きだが実際に自分に危害が及ぶとなると話は変わってくる
まだ足元がおぼつかないため糸が絡まったままよろめいてしまった
それに激怒した蜘蛛はこれでもかと言わんばかりに幾度となくその巨大な毒牙を私の手に突き刺してきた
毒蜘蛛は聞いたこともない金切り声のような鳴き声をあげていて心底怖かった
尻尾からも大量の糸を垂らしてきて、それに触れたら死ぬなと本能的に感じた(これは多分昨夜観た初代仮面ライダーの歴代怪人集の影響だと思う)
糸が顔に触れるか触れないかで目が覚めた
幸せな夢を幸せなまま終わらせてくれないあたり、何もかもバランスってうまいことできてるんだなあと寝ぼけ眼ながらうっすらと絶望すると同時に、いくら巨大な毒蜘蛛に何度も刺されようとも綾野剛と星野源に会えた喜びは薄れないもんなんだなと感心していた